文化や太郎 (通訳案内士/日本文化)

経験40年通訳ガイドが通訳案内の情報や通訳案内士希望者へのお手伝い、インバンド、日本文化紹介のコツなどおりおり語ります。

菊 Vs. 葵

桜と菊とくれば次にガイド必須は徳川家の三つ葉葵(hollyhock trefoil) の家紋だろうか。three leaf clover と易しい表現もあり、お客さんを連れて歩く先々で馴染の家紋だ。松平(徳川)家が崇拝していた京都の賀茂神社の御神紋が葵でデザインされ「三つ葉葵」が将軍家マークとなった。

江戸時代には天皇家紋を凌いで権威の象徴となった三つ葉葵だが、大政奉還が行われた徳川家の二条城は天皇家の別荘二条離宮となり装飾も葵紋菊御紋は複雑な関係となった。城内では葵紋が削り取られた箇所や葵紋が残っている箇所もあり観光客が二条城を訪問すれば通る唐門の軒下には12箇所葵紋の上から菊紋の金具を被せてある。釘隠(decorative nailhead cover)の紋様や屋根に歴史の大きな変化が感じられ、その辺りは歴史と王室があるヨーロッパの富裕層高齢者FITのお客様はとても興味を持たれる。

時系列に歴史を説明するだけならイヤホンガイドやgoogleに任せればよい時代となった。ガイドとしての付加価値をどこでどう演出するかはツァーとお客さんのタイプをまず知ることから始まる。

桜 Vs. 菊

話を元に戻す。日本には四季があり季節折々の文化のテーマがあるこの国の豊かさはインバウンドの呼び込みにはありがたい。もっとも地球温暖化の影響で四季が二季になる危機感を温暖化の話と絡ませて話さなければ四季折々の。。。なんてガイドがマニュアル通りやってももちろん今時のお客さんは当然だが誰も耳を傾けない。

一般に日本の国花と思われている春は桜、秋は菊は広く深く私達の生活に溶け込んでいるのでガイド就業時の雑談の話題性には困らない。 祝い事に飲む桜湯や節句を祝う重陽の菊酒など花弁を小さな器の中で愛でるような繊細な美意識を日本人はとっくの昔に忘れてしまった。満開の桜を予定して来日したグループが想定外の天候の変化で楽しむタイミングを逸した昨年、旅館で夕食の宴会時にスーパーで購入した「桜花の塩漬け」を湯呑み茶碗に入れお湯をさして一人一人に桜湯を用意。大変喜んでもらったことがある。

Please enjoy your cherry blossom fully blooming in a tea cup! 長いツァーではお客さんが不平を言う前に先手を打つ工夫をしたい。


Chrysanthemum 'sake' in the hope of warding off negative energy and inviting longevity in one of the five 'Sekku' seasonal festivals; Sept.9

よけいなお世話ですが。。。

よけいなお世話ですが、インフル予防接種なさいましたか?
インフル流行が今年は早く年始ぐらいが最初のピークかというニュースもありました。日本のワールドラグビー開催で世界中から多くの人が来て下さりインバウンドはバブルさながらの「様」でしたが残念ながら「置き土産」もありました。
グローバル化ヴィールスなど見えない世界のグローバル化でもあります。最近 東京で観光バスの「はとバス」が停止していたハイヤーに衝突してハイヤーの運転手さんが亡くなった事故がありました。はとバスの運転手さんはインフルにかかっていたことが判明、直接事故との因果関係があるかわかりませんが観光バスもハイヤーも通訳案内士には身近な存在なので他人事ではありませんでした。
日本へ年末年始を過ごしに来日されるお客さんをガイドされる通訳案内士さんは初詣のご案内や福袋購入など寒い中や人混みにもまれるのは必須です。
個人事業主は健康への自己防衛も仕事のうちです。御身大切になさって下さい。家紋のお話を「転がして」いたのに突然の太郎のお節介ご容赦!

天皇家の菊御紋

「菊」は天皇家の御紋として通訳案内士の就業には必ず話題になる花。日本のパスポートの表紙が菊(御紋とは違うデザイン)なので国の花が菊だと思う人もいるが日本に公式に国の花は決まっていない。一般的には桜か菊ということだろう。

Chrysanthemums were introduced to Japan in the 8th century from China, and favorably used first as a personal imperial emblem by the ex-emperor Gotoba in the 12th and 13th century.
Chrysanthemums had been believed to have talismanic value against evil in old China.
The present imperial emblem was designed by the Meiji Emperor in the 19th century and officially designated as the formal imperial crest of the chrysanthemum in 1869.

天皇家皇太子家 front sided chrysanthemum with 16 double petals
皇族 back sided chrysanthemum with 14 single petals and/or 16-pedals in different design in each branch family)

江戸時代には将軍家の「葵」の紋章の使用は厳しく取り締まられたが生の花としては菊は庶民の間にも広がり品種改良とともに暮らしの中に根付き新種も次々生まれた。今日でも食卓、旅館、仏壇やお墓でも菊だらけの日常である。
菊の御紋は日本の国章(national emblem) であり商用には許されていない。

Why are there so many chrysanthemums offered in the graveyard, no roses, nor orchids?は寺院訪問でお墓を見つけるとよくしてくる質問だ。お客さんの笑いを誘う答えを用意したい。

刺身の菊の花

刺身の盛り合わせの黄色い菊がタンポポには見えないとも言えないが(笑) 最近はプラスチック製の黄色い菊が宴会などでは増えた。プラスチック菊とバランをふんだんに使って飾る「刺身の舟盛り」は一種の現代版アートだ。

もちろん、生の食用黄菊は江戸時代に殺菌作用があるので腹痛予防に生魚を食べる時に一緒に食べるようになった。大工や佐官が仕事の合間に空腹を満たす食べ物として発達した寿司は生魚の鮮度の維持と殺菌作用の期待から「酢」を使い最初の白飯は「酢飯」となった。またガリの生姜、ワサビ、そして黄菊も抗菌作用や薬効があるので暮らしの知恵として取りこまれて寿司は完成された「庶民のスナック」となったが 今日ではミシュラン星のお寿司屋さんの予約は半年待ちだ。

オバマ大統領が訪れた「数寄屋橋次郎」のお寿司屋さんは一時、観光スポットとなり閉店時間中にも店の前までちょくちょく連れて行きお店の人にけむったがれ恐縮したものだ。

Edible chrysanthemums with antiseptic effect were introduced to 'sushi' and/or 'sashimi', thinly sliced raw fish in the Edo period, today a small yellow mum on the plate has been used only as decoration (edible though)

FIT, VIPお客様と寿司屋

ワールドカップの後は大嘗祭大嘗祭関連行事には海外のお客様も感激され帝国、ペニン、パレス、ア・マンホテルなど皇居周辺に宿泊されたお客様は警備の厳しさに新たに日本の皇室に興味を持たれた方々もいたことだろう。太郎のお客は帝国ホテル泊だったが施設への出入り口に金属探知機が設置された。

夕食に旨い寿司屋へ連れて行け、ということで外国人VIP慣れした築地の寿司屋へ。

世界の主要都市にお寿司屋さんがあるのが当たり前になったがその分 寿司「本場」の日本で彼らの期待と舌に応えるお寿司屋さんの選択は決して易しくはない。お客さんがどのレベルを求めているのか それこそTrain Sushi (回転寿司)から久兵衛まである。「お財布」が第一なのか、どの程度味覚がとぎ澄まされているお客さんなのかなど 経験と「勘」働きの必要どころ。

1. 一枚板白木のカウンター席がある.
2. 生ワサビが可能か
3. 刺身の盛り合わせに添えられた菊はプラスチックではなく生の菊花か
4. 写真付英語版メニューがあるか

FITの上客接遇にはこれらの条件ができれば揃う雰囲気の良いお店を知っておきたい。連れて行った店で刺身の盛り合わせと辛口の日本酒でとりあえず「乾杯」で落ち着いたら,
"By the way, why, a piece of dandelion on the plate? Can I eat it?
What a good timing you are asking it to me!," thought Taro.

太郎マニュアル(宴の後3.)

先回からの続きです。

6.ググるのが大好きで、人の話を全く聞いていない人達はどこの国にもいます。「バスの出発時間をちゃんと伝えましたよ、」ということをお客さんをバスから降ろす前にお客の正面にきちんと向かい“Attention Please!! ”バス出発時間の確認、来なければ残して出発すると明言する。(ここを強くでないと駐車場でポッチリしてしまう結果や後でブチブチになることもあります。❗️)

7. ホワイトボードに集合時間明記して全員に見せてからバスのフロントガラスに置くガイドさんもいるが、太郎は集合時間と施設の電車最寄駅から主要駅までの運賃とタクシー料金を記入した紙を配布。(最近はお客さんが自身のスマホで写真を撮るので数枚用意しておけばOK) 又、主だった大型施設と主要駅間の移動方法をそれぞれファイル作成、PC and/or スマホ保存すれば次回非常に楽。トラブった時に「ちゃんと紙(写真)あげたよね」と言える事がポイント

8. 大勢の観客の中での添乗では「客寄せパンダ」ではないが多少目立った色のアウトフィットを勧める。自分がお客を探すではなくお客さんに自分を見つけてもらうポイント

9. 時間が来たらバスを出す。(時間通りに戻って来たお客様を待たすのは5分が限度)

10. 出発時に乗車人数を必ず確認連絡、台数口移動は帰着後就業終了報告必須。

たかが(?)イベント会場送迎と思いがちだが、されど(?)、脇が甘いとトラブル時もある。駐車場での「ポッチリさん」がエージェントに迷惑をかける「困った」さんにならないよう不特定多数移動のhandling を自分なりに考えよう。